蜜色の唇


 お揃いで土の色をそのまま生かした素焼きのタンブラーを買った。
 それによく冷えたカモミールティーを透明感のある天色のマドラーでくるくると
 かき混ぜながら郁はへにゃりと笑った。

「郁、なにがそんなに楽しいんだ?」

 ソファーに座りながら、郁の髪をタオルで拭いている堂上が問う。
 しかし郁からは答えはない。ただ嬉しそうにへにゃりと笑うだけ。

 ――仕方ないか。

 今日、久しぶりにデートをした。
 恋人の頃と同じように駅で待ち合わせて、そして映画を見て、そのまま街をぶらついて。
 たったそれだけなのに郁にとっては嬉しい出来事だったらしい。
 堂上自身も確かに楽しかった、と認めてはいる。
 なにより郁の嬉しそうな笑顔を見れたことが一番嬉しかったから。

 ――郁。

 耳元で囁いて、そのまま郁の顔を上に向かせて額にキスを送る。
 可愛らしく「ひゃぁ!」と呟いた郁の腰に腕を回し、一気に引っこ抜く要領で
 自分の上に座らせる。

「もう! 何するんですかっ!」
「飲み物はこぼしてないぞ?」
「そういう問題じゃありませんっ!」
「――…郁」

 低く呟きながらタンブラーを盗み、そのままテーブルの上へ。
 そのまま艶やかで甘い郁の唇をたっぷりと味わう。

 くらくらとする甘い匂いに酔わされながら――…。


     〜 Fin 〜