「篤さん大丈夫?」
「あぁすまん平気だ。ちょっと温めた液体が腕にひっかかっただけだから」
「そう――…」
少し行儀が悪いな、とは思いつつも腕についてしまった液体をそのまま舐めとった。
牛乳に生クリームを加えて温めていただけなので甘くないのが幸いだ。
これが逆にボウルの中のプリン液だったらと思うとちょっとだけ腰が引ける。
あまり甘いのは好きじゃないのだ。今作ってるのははレシピ通り作ってはいるけれど。
「郁大丈夫か? 顔が赤いぞ?」
ふと、呟かれた声の硬さが気になって郁を見れば熟したトマトよりも赤い郁がそこにはいた。
一歩二歩とボウルを持ったまま近づいて顔を覗き込もうとした瞬間――…逃げられた。
名前を呼べば「なんでもないっ!」という焦った声が返ってくる。
「アホウ…」
どう見てもなにかあっただろうと突っ込みたい表情を見れば気になる。
けれど明らかに郁の気配が堂上を拒んでいるのだ。悲しいことに。
「まぁいいか…。とりあえずこれを作ってしまおう」
ちくりとした胸に痛みを覚えながら、作業へと戻る。
出来上がったものを食べて、郁が美味しいといってくれることを想像しながら――…。
〜 Fin 〜
【 それは無意識に の堂上編 】