結婚してから半年。
二人の生活に慣れてきたお陰か、郁の可愛らしい動作に気が付いた。
正直、可愛すぎて参る。すぐに振り返って抱き寄せて唇を貪りたい衝動にかられる。
――本当にどうしてくれようか。
けれど堂上が読書に夢中になっていなければ決してしてくれないのだ。
それも背中が開いてなければ出来ないらしい。
そっと気が付かれないように、と配慮しているのだろうが、逆にそれがくすぐったくて気が付いた。
悪戯心を起こしてそのままほっといたら「篤さん大好き」なんて言いやがる。
――俺のほうがもっと好きだ。
こっそり心のなかだけで呟いて読書に夢中なふりをする。
顔に熱を帯び始める自覚はあるものの、背中にぴったりと寄り添っている郁は気が付かないだろう。
郁から堂上に触れるのはじゃれあいの延長ならいざ知らず、こういう面では未だに少ない。
もっと触れて欲しくて、こっそり本を読みふけっているまねをしていると知ったら郁はどうするだろうか?
軽蔑するだろうか? それとも怒って口を利いてくれなくなるだろうか?
それが怖くて行動に移せない。
実際、読みかけの本は内容を丸暗記するほど読み慣れている本だ。
そんな本にカバーをかけているのは読書に夢中だと認識させるための布石。
自分自身の欲望を満たすためならこのくらい気にもならない。
ただ、思考の片隅にはもう少し慣れたら抱きしめてくれるだろうか、という淡い期待もある。
いっそ今気が付いたふりをして郁の頭を撫でようか。
それとも郁の腕を引っ張って、胡坐をかいている上に倒れこませようか?
背中に感じる確かな熱に、少しだけ悪戯したい気持ちになった――…。
〜 Fin 〜